『経営をビジュアル的に考えよう 中国企業ロゴデザイン展』

虎ノ門にある中国文化センターで開催中の『経営をビジュアル的に考えよう 中国企業ロゴデザイン展』を見に行ってきた。

表意文字である漢字しか使わない中国におけるロゴというのは、非常に意味性が問われるそうだ。日本語はその意味性をアルファベットやひらがなカタカナで和らげるらしい。百花繚乱する漢字ロゴを堪能していただきたい。

とにかく漢字に注目。中国ではPCに搭載されているフォントでロゴを作るとそのフォントベンダーにお金を払わないといけないらしい。なので元となるフォントを少し形やニュアンスを変えてロゴにする必要があるとのこと。加えてさすが書の国、文字へのこだわりは計り知れない。そしてその文字で培った造形力はシンボルにも生きている。玉石混交の国においてもトップクラスは世界レベルである。

中国の篆刻の分野で国宝的存在であり中国CIの第一人者である王超鷹先生の講演も面白かったです。先述した表意文字文化におけるロゴの特性や、フォントの権利の話の他に、人工知能がロゴデザイナーを駆逐する可能性、上海ユダヤ難民記念館のロゴデザインの話、これからはC2F(Customer to Founder)の時代だ、など非常に勉強になりました。

渡辺良 RYO WATANABE 1936-2017

昨年逝去された画家・版画家、渡辺良氏の回顧展が本日より元麻布ギャラリーにて開催される。

氏は主に60~80年代のニューヨーク、それもソーホーというとにかく面白く刺激的なエリアで活動していた。その作品はニューヨーク近代美術館(MOMA)やホワイトハウスにもコレクションされている(こちらからMOMAの氏のページにアクセスできる。残念ながら肝心の作品イメージは掲載されていない)。またSol Lewittの助手を務め、超名門Pratt Instituteで講師もしていたと聞く。

氏の作品は日本人離れしたシャレ感が漂う。奔放に描いても濁りや奢りといった要素を感じさせない洒脱さはNY生活のせいもあるだろうが、生来のもののように思える。今回はリトグラフ代表作”Undressing woman”シリーズをはじめ油彩などの紙作品を展示し、まさに回顧展と言った彩りを見せる。私も設営を手伝ったが、ホワイトキューブ空間に作品が飾られると何というか、場がふわっと薫るような、何か空間に意味をもたらされたような感じを覚えた。

また額縁にも注目していただきたい。今回展示に使われているいくつかの額縁は氏の手製である。ミニマルだが手仕事の良さがちゃんとある。この額を越えるものを私は知らない。生前塗装の製法を聞いたことがあるが、愚かなことにメモを取ることを忘れていた。

 

 

彼は私が上京して一番最初に出来た友人だった。歳は離れていたが、先生とか先輩というのも何かしっくりこない。

彼は地方から出てきた右も左も分からない私にいろんなことを教えてくれた。まだ見ぬ世界への扉を開いてくれた。アートだけじゃなく文学や音楽、さらには酒への扉を開いてくれた。彼から説教くさい話は聞いた記憶が無く、いつも2人彼のアトリエで酒を飲みながら他愛のない話ばかりしていたが、絵を描くことを志していた私が一度「絵で大切なことって何?」と聞いた際、彼はふとまじめな顔になり、絞り出すような話し方で「本質… 本質を大事にすること」とつぶやいた。その言葉は未熟な大学生だった私の心奥に深く突き刺さり、その言葉は10数年たった今も心の中に突き刺さったままだ。あの瞬間から自分の世界を見る目と態度が変わった。本当に大事な言葉をもらったと思っている。

まあ彼との思い出は尽きることが無いが、あまりさらけ出し過ぎるのもなんだかかっこわるい。ここらでやめておこう。

 

渡辺 良

RYO WATANABE 1936-2017

2018年9月14日(金)-20日(木)

12時-18時

元麻布ギャラリー(最寄り:麻布十番駅)

ぜひお越しください。

ZUCK個展『CHITA!』

桑沢デザイン研究所の同期で現在イラストレーターとして活躍中のZUCK(ずっく)さんの新作個展にお邪魔してきました。ZUCKさんは2016年に東京おかっぱちゃんハウスで開催された個展がとても素晴らしかったので、今回の新作個展も楽しみにしておりました。

阿佐ヶ谷のVOIDにて

思えば彼は学生の頃は昭和レトロなイラストを描いていた。卒業して10年近くたつが、描きたいものをずっと描き続け、少しづつ変化していって自分だけの絵に到達したように勝手ながら私は思う。どこかで見たような、でも初めて見るような。つかみどころの無い不思議なイラストである。何にせよ絵はとても上手いと思う。

以下個展のフォトレポートを。ブレてたり映り込みだったり、撮る側がヘタクソで申し訳ない。

ご本人の人柄と似ている。誰でも受け入れる人だが本心をぶつけてくるわけでもない。本心の底が深いのか浅いのかも分からないお方だ。

 

ZUCK個展『CHITA!』 http://void2014.jp/archives/2228

阿佐ヶ谷VOID

2018年7月19日(木) – 7月29日(日)
Open 【火〜木, 日】15:00-21:00 【金〜土】15:00-23:00 / 月曜定休 / 入場無料

ずっくwebサイト http://zuckjp.net/

 

上海・張慈中書籍装幀設計芸術館

中国の書籍装幀デザイン第一人者、張慈中。戦後の新中国成立以降半世紀以上活躍している御仁である。国家の出版物のデザインを多く手掛けており、中華人民共和国憲法や毛沢東選集、党の機関紙『紅旗』なども彼の仕事である。日本のデザインもそうだが、こういう黎明期のデザインは人の手触りが感じられて、どこか懐かしかったりする。

張慈中は1924年上海・楓涇古鎮生まれ。楓涇古鎮の中にこの『張慈中書籍装幀設計芸術館』が建てられたのは2016年の頃、その当時の記事によると本人はご存命とのことでずいぶん長命な方であり、長らく中国のデザインとその発展を見てこられたのだろうなあ、と思う。

館内の解説を読むと元々上海や杭州で広告デザインの仕事をしていたそうで、上海広告デザイン界の“四小龍”の一人と称されたそうだ(この通り名のセンスたまらないですね)。その後広告デザイナーから書籍装幀家へと転向し、北京市の文化委員会主任を務めるなどしながら、わりあい国家的・公的な仕事を多く手掛けてきたそうだ。

中華人民共和国憲法の装幀を1954年に手掛け、その時用いた自作の長宋体が中華字体庫(書体を収めた辞典みたいなもの?)に収録され広く使用されるなど、現代中国の文化に与えた影響は大きい。

 

とまあこんな感じで、デザイナーの私としてはとても興味深く観ることができ、思いの外時間を使ってしまった。

話は変わるが、中国に来た際はぜひ本屋に寄ってみてほしい。中国語が読めなくとも、日本とはまた違った装幀デザインに目を奪われることだろう。ディテールや品質、マーケティング意識などは日本のデザインの方が断然良い。しかし元気さというか、自由さ、彩りの幅広さなどは中国のデザイン、見ていて実に楽しい。

TDC 2018

TDC(東京タイプディレクターズクラブ)受賞作品展を観に行きました。久しぶりのGGG。学生の頃は足しげく通ってたのだけども社会人になってからはめっきり。基本的にデザインを見る眼を養ったり、その時々の流行に触れたりするのはギャラリーではなくデパートやショップ、スーパーマーケットなど“現場”でするのが良いと思っているが、たまにはこういうデザイン展で刺激を受けるのも悪くない。

Au Chon Hin(マカオ)「16th Macao City Fringe Festival」イベントVI。

マカオのアートフェスティバルのビジュアルアイデンティティーのお仕事。自分もギターフェスティバルのデザインをあれこれとしているので気になった。しっかし元気にやってるなあ、と思った。少々デザインが勝ちすぎてるようにも思ったけど、それだけこのフェスも元気なのだろう。webも見てみたら元気してていいなーと思った。街を挙げての祝祭感。ポスター、チラシ、プログラムだけでなくバナーやなんとバスのラッピングまでブランディングに活用してて羨ましい限り。

やっぱりポスターがすき。

でかい。昔石原慎太郎が「本当にうまい画家は小さいキャンバスに描いてもうまい。不必要にでかい絵を描くやつはまだまだ」みたいなことを何かの展覧会の序文に寄せていて、それはその通りだなと思うのだがそれでもポスターはでかい方がいい。どれも受賞作だけあって明快で強い。こんなパワーのあるポスターに街中でふと出くわしたらさぞインパクトを受けることだろう。

ポスターは“説明”に終始してはいけない。“出会い”が大切だ。

Nod Young, A Black Cover Design(中国)「Editor 」VI

上海のライフスタイルブランドのビジュアルアイデンティティー。ショップの様子はここから見れる。ここ数年中国若手クリエイターからの出品&受賞が増えている。アジアが元気ですな。…と思ったらこのA Black Cover Design、調べてみた北京のキレッキレのデザイナーGuang Yu氏のデザイン事務所のようだ。数年前のTDC展で受賞してたCDデザインが名前と共に記憶に残っている。けっこうキャリアも長い。それでも若手だとは思うけどね。

植原亮輔「D-BROS 2018カレンダー」

ありそうで無かった、スーパーなどで見かけるPOPをモチーフとしたデザイン。オフィスに飾ったら空間がちょっと元気になりそう。

渡辺良重「AUDREY パッケージ」

可愛い。洋菓子店のパッケージ。ネットで調べてみてもとにかく可愛い、大人可愛いと評判。お菓子自体も品良く可愛い。パッケージも含めてお土産に喜ばれるだろうなあ。

Sharon Werner + Sarah Forss + Abby Haddican(アメリカ)「RockFilter Distillery」パッケージ、バナー。

農場が運営する蒸留酒製造所のパッケージとバナー、とのこと。ラベルの裏にも仕掛けが。ほかにも彼女達のポートフォリオサイトで素敵な仕事事例がたくさん見ることができる。

 

ギャラリーを出るとこんなお店も。

VOCA展2018

私はグラフィックデザイナーをやっているのでやはり立体作品や映像作品より平面の美術が好きである。ということで絵画や写真など平面美術の領域で活躍する40歳以下の作家の展覧会であるVOCA展、観に行ってまいりました。一口に平面作品と言っても総勢30人以上の作家による展示なので方向性は色々なので必ず自分が気に入るものが見つかりやすいとも言える。

前川祐一郎「column」ほか

私の展覧会の見方というのは、まず1周ぐるっと全体を見て回ってそこである程度気になったものに目星を付けて、2周目でそれらを中心にじっくり見て回る、というやり方なのだが、この作家の作品は周りの作品と比べるととても控えめで、実は1周目では記憶に残らなかった。しかし2周目でこの作品、なにか輝きというか彩りを覗かせるな、と思いじっくり鑑賞してみようとなった。

この作品はキャンバスに油彩で描かれた抽象画である。ラフなタッチでざざざっ、しゅしゅしゅっ、と筆を走らせている。彩度を抑えたカラーリングは落ち着いており(しかしカラフルにも感じる)、おそらくこれが最初地味さを感じさせたのだろうが、このラフに走らせた色同士の重なりが響き合い淡やかな奥行きを感じさせる。見続けているといろんな発見があり、様々な彩りがぽつぽつと顔を覗かせる。広い世界を感じさせるのではなく何というか…こじんまりとした裏庭を眺めているような自分だけの楽しみみたいな感覚を覚えた。

同時開催の津上みゆき「時をみる」>

VOCA展と同時開催されている津上みゆきの展示も素晴らしかった。

風景を元にした抽象画、というのだろうか。たとえば人工知能にこの絵を見せても何が描かれているかは判別不能だろう。だから抽象画だ、とも言える。しかしそれでもこれは風景画だと私は思う。見ていると街や自然の中に降り立ったような感覚になるからだ。

作品からは一瞬~時期という幅のある時間感覚を覚えた。長さの感覚は様々だが、固定化された瞬間ではなく、とにかく動きや流れというものがあった。そしてそこには記憶・思い出と言った。昔行ったことのある場所へ久しぶりに訪れるとふっとその場所ですごしたときの記憶、思い出、感傷などがよみがえることがある。それと似たような感覚。

風景を見るように意識が入り込んでいけるような絵。

入り込むと昔得た感傷が立ち上ってくる、そんな絵。

上野の森美術館による序文が素敵だった。

「生命感に溢れる豊穣な色の世界とともに、それぞれの絵に流れる時間を感じていただければ幸いです」

まさにこのとおりの作品だった。

自分は趣味で絵を描くのだが(デザインとは全く違う活動として)、前川氏津上氏の作品は自分もこういう絵を描きたいと思わせるものだった。