今日のメモ

・ブランドのあり方が変わってきている。80年代90年代は太陽のように上から照り付ける存在だったが、今はとなりで寄り添うヒーターのような存在

・課題と解決という2つの隔たりがあったとして、直線で最短距離で到達する人が成果を出す。曲線で遠回りする人が企業文化を創る。文化は環境と言ってもいい。成果を出す人、文化を創る人。永続するための両輪

・今しか見ない日本人。どうしたら長期的視野を持てるか。それは愛に他ならない。自社のブランド・製品に愛があれば、短期的目標ではなく、長く生きながらえてほしいと思うはず

『経営をビジュアル的に考えよう 中国企業ロゴデザイン展』

虎ノ門にある中国文化センターで開催中の『経営をビジュアル的に考えよう 中国企業ロゴデザイン展』を見に行ってきた。

表意文字である漢字しか使わない中国におけるロゴというのは、非常に意味性が問われるそうだ。日本語はその意味性をアルファベットやひらがなカタカナで和らげるらしい。百花繚乱する漢字ロゴを堪能していただきたい。

とにかく漢字に注目。中国ではPCに搭載されているフォントでロゴを作るとそのフォントベンダーにお金を払わないといけないらしい。なので元となるフォントを少し形やニュアンスを変えてロゴにする必要があるとのこと。加えてさすが書の国、文字へのこだわりは計り知れない。そしてその文字で培った造形力はシンボルにも生きている。玉石混交の国においてもトップクラスは世界レベルである。

中国の篆刻の分野で国宝的存在であり中国CIの第一人者である王超鷹先生の講演も面白かったです。先述した表意文字文化におけるロゴの特性や、フォントの権利の話の他に、人工知能がロゴデザイナーを駆逐する可能性、上海ユダヤ難民記念館のロゴデザインの話、これからはC2F(Customer to Founder)の時代だ、など非常に勉強になりました。

上海・張慈中書籍装幀設計芸術館

中国の書籍装幀デザイン第一人者、張慈中。戦後の新中国成立以降半世紀以上活躍している御仁である。国家の出版物のデザインを多く手掛けており、中華人民共和国憲法や毛沢東選集、党の機関紙『紅旗』なども彼の仕事である。日本のデザインもそうだが、こういう黎明期のデザインは人の手触りが感じられて、どこか懐かしかったりする。

張慈中は1924年上海・楓涇古鎮生まれ。楓涇古鎮の中にこの『張慈中書籍装幀設計芸術館』が建てられたのは2016年の頃、その当時の記事によると本人はご存命とのことでずいぶん長命な方であり、長らく中国のデザインとその発展を見てこられたのだろうなあ、と思う。

館内の解説を読むと元々上海や杭州で広告デザインの仕事をしていたそうで、上海広告デザイン界の“四小龍”の一人と称されたそうだ(この通り名のセンスたまらないですね)。その後広告デザイナーから書籍装幀家へと転向し、北京市の文化委員会主任を務めるなどしながら、わりあい国家的・公的な仕事を多く手掛けてきたそうだ。

中華人民共和国憲法の装幀を1954年に手掛け、その時用いた自作の長宋体が中華字体庫(書体を収めた辞典みたいなもの?)に収録され広く使用されるなど、現代中国の文化に与えた影響は大きい。

 

とまあこんな感じで、デザイナーの私としてはとても興味深く観ることができ、思いの外時間を使ってしまった。

話は変わるが、中国に来た際はぜひ本屋に寄ってみてほしい。中国語が読めなくとも、日本とはまた違った装幀デザインに目を奪われることだろう。ディテールや品質、マーケティング意識などは日本のデザインの方が断然良い。しかし元気さというか、自由さ、彩りの幅広さなどは中国のデザイン、見ていて実に楽しい。

TDC 2018

TDC(東京タイプディレクターズクラブ)受賞作品展を観に行きました。久しぶりのGGG。学生の頃は足しげく通ってたのだけども社会人になってからはめっきり。基本的にデザインを見る眼を養ったり、その時々の流行に触れたりするのはギャラリーではなくデパートやショップ、スーパーマーケットなど“現場”でするのが良いと思っているが、たまにはこういうデザイン展で刺激を受けるのも悪くない。

Au Chon Hin(マカオ)「16th Macao City Fringe Festival」イベントVI。

マカオのアートフェスティバルのビジュアルアイデンティティーのお仕事。自分もギターフェスティバルのデザインをあれこれとしているので気になった。しっかし元気にやってるなあ、と思った。少々デザインが勝ちすぎてるようにも思ったけど、それだけこのフェスも元気なのだろう。webも見てみたら元気してていいなーと思った。街を挙げての祝祭感。ポスター、チラシ、プログラムだけでなくバナーやなんとバスのラッピングまでブランディングに活用してて羨ましい限り。

やっぱりポスターがすき。

でかい。昔石原慎太郎が「本当にうまい画家は小さいキャンバスに描いてもうまい。不必要にでかい絵を描くやつはまだまだ」みたいなことを何かの展覧会の序文に寄せていて、それはその通りだなと思うのだがそれでもポスターはでかい方がいい。どれも受賞作だけあって明快で強い。こんなパワーのあるポスターに街中でふと出くわしたらさぞインパクトを受けることだろう。

ポスターは“説明”に終始してはいけない。“出会い”が大切だ。

Nod Young, A Black Cover Design(中国)「Editor 」VI

上海のライフスタイルブランドのビジュアルアイデンティティー。ショップの様子はここから見れる。ここ数年中国若手クリエイターからの出品&受賞が増えている。アジアが元気ですな。…と思ったらこのA Black Cover Design、調べてみた北京のキレッキレのデザイナーGuang Yu氏のデザイン事務所のようだ。数年前のTDC展で受賞してたCDデザインが名前と共に記憶に残っている。けっこうキャリアも長い。それでも若手だとは思うけどね。

植原亮輔「D-BROS 2018カレンダー」

ありそうで無かった、スーパーなどで見かけるPOPをモチーフとしたデザイン。オフィスに飾ったら空間がちょっと元気になりそう。

渡辺良重「AUDREY パッケージ」

可愛い。洋菓子店のパッケージ。ネットで調べてみてもとにかく可愛い、大人可愛いと評判。お菓子自体も品良く可愛い。パッケージも含めてお土産に喜ばれるだろうなあ。

Sharon Werner + Sarah Forss + Abby Haddican(アメリカ)「RockFilter Distillery」パッケージ、バナー。

農場が運営する蒸留酒製造所のパッケージとバナー、とのこと。ラベルの裏にも仕掛けが。ほかにも彼女達のポートフォリオサイトで素敵な仕事事例がたくさん見ることができる。

 

ギャラリーを出るとこんなお店も。

名古屋ギターフェスティバル コンサルティング

私は「デザイン戦略は4次元的に組み立てましょう」と話すことが多い。ポスターやチラシなど“モノ”の制作(平面上でものを考える)、どういうツール・媒体を組み合わせて展開するか(考慮の対象が平面から世界に)、そしてタイミング・期間・計画(時間の概念)、これを組み合わせれば4次元である。デザイナーに何か依頼される時はモノの制作だけでなくモノの活用、さらには根本の戦略にまでさかのぼって相談されることをおすすめする。

名古屋ギターフェスティバル

2013年に名古屋の若手クラシックギタリスト生田直基さんによって開催され、以降毎年夏に開かれているクラシックギターの祭典である。“名古屋飛ばし”という言葉があるように、国内外の一流プレイヤーが演奏のために来ることはあまり多く無い名古屋だが、そんな地において“本物の演奏を聴いてほしい、そして名古屋の音楽文化を底上げさせたい”という志で名古屋ギターフェスティバル(NGF)は運営されている。

実際出演するギタリストは国内外で一流の演奏家ばかりであり(主催の生田さんも一員として公演している)、場合によっては本邦初公開なヨーロッパの超絶ギタリストが招聘されることがあり、東京でも中々聴けない充実度としてNGFは名古屋の地で異彩を放っている。開催場所もここ数年は名古屋の中心地・栄にある宗次ホールで開催され、文化を発信していくにはふさわしい場所を本拠地としており、イベントのポテンシャルは大きい。

リニューアル前のデザイン

課題

そのポテンシャルを存分に発揮できていないのが課題である。例えば集客の面で言えば、毎年宣伝活動は主催の生田さんが中心になり、チラシをまいたりWebで告知をしたりと一通りのことは行っていた。しかし戦略を持って宣伝活動を組み立てるのは容易なことでは無く、本人も運営や演奏など仕事は山積みで宣伝業務については販促物を手配することで精一杯の状況であった。その結果チラシやwebなどメディア間のシナジーの活用や、告知のタイミングなど段階的な要素も考慮されておらず、宣伝の効率はあまり良くない状況だった。

そしてブランドイメージの受け皿となるロゴが無いせいで毎年開催されるフェスティバルにも関わらず知名度・印象度が蓄積されづらくなっており、毎年リセットされた状態から宣伝活動が始まっていた。

「せっかく毎年行われるフェスティバルであるのだから、“夏の名古屋の名物イベント”としておなじみの存在を目指そう」。私は生田さんにそう伝えた。

提案

・VIの開発

・段階を踏んだプロモーション

・Webをよりどころにする

大きく3つの提案をさせてもらった。

「VIの開発」、VIとは要するにビジュアルアイデンティティ、ロゴやテーマカラーなどのことである。“名古屋ギターフェスティバル”という名称だけでなく、色・形・表現を用いて視覚的に具現化された感覚に訴える存在を持とうと提案した。

VIを制定する意図とその効果は全部書くと長くなるのでかいつまんで記すが、一番の意図としては年度ごとに印象のばらつきがあったNGFにVIで一貫性・継続性を持たせよう、というところである。

さらにはしっかりしたVIを制定すれば以降それを正しく使い続けることでイメージの相乗累積効果を期待することができる。(ポスターやチラシ、Web、DM、プレスリリースなどのツールのデザインに統一感を持たせることで生まれる相乗効果と、消費者がそのツールを2回、3回、4回…と目にするごとに印象が強化される累積効果が上手く組み合わさった効率の良い効果を相乗累積効果という。)

このVIの実制作については別の機会に詳しく記したい。

 

「段階を踏んだプロモーション」

AIDMAの法則というのがある。広告や広報の仕事をしている方にはおなじみの法則かもしれない。AIDMA(アイドマ)とはAttention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字を取ったもので、消費者が商品の購入に至るまでの心理的プロセスを表したものである。インターネット時代の今はAISAS(アイサス)の法則が主流のようだが(SはSearchとShare)、本稿で言いたいのは要するに消費者の心理には段階があり、宣伝活動はその段階を踏まえて行うことが肝要だ、ということである。例えば販促物を作るにしても、ファーストコンタクトのAttentionの段階の人にアピールするのか購買を視野に入れたActionの段階の人にアピールするのか、狙いを定めることが大事である。よくある間違いは、ひとつの販促物でこの段階をかけあがらせようとするものである。1枚のチラシで注目を集め、内容を知ってもらい、購買までこぎつけるのは難しい(あるにはあるのだけども)。そしてそれぞれ販促物には特性があり、その特性を活かした利用を心掛けたい。例えばポスターはそのサイズや掲示場所などの理由により不特定多数の人(通行人など)にアピールすることが可能となり、故にAttentionの段階に向けたデザインをするのがよい。ポスターを見て商品を買ってもらうのではなく、まずは記憶に、というより無意識下に印象を残してもらうのを狙いとしたい。チラシは中々特性に幅がある。まず手に取ってもらうには目立つ必要があり、手に取ってもらった後は内容を読んで興味を持ってもらわないといけない。なのでできればチラシの表面は印象力の強いデザインにし、裏面に情報を充実させたい。

そして宣伝活動にはタイミングというものも大事である。フェスティバルで言えば本番3か月前に配布するチラシは具体的で詳細な内容のものより、感覚に訴え期待感を醸成するようなものにし、本番が近づいたタイミングでダメ押し的に購入を勧める内容のものを配布したい。

そしてWebとの連動も忘れてはいけない。ポスターやチラシに商品を告知させるのも大事だが、Webサイトへ誘導することも現代の販促物の重要な役割の一つである。Webサイトはよく「砂漠に建った一軒家」と例えられる。作っただけでは誰もアクセスしてくれないのである。SNSとアナログ販促物を使って周知に努めないといけない。

以上宣伝活動のセオリーの説明になってしまったが、提案したことはこのセオリーに則って宣伝活動しよう、ということである。

 

「Webをよりどころに」

NGFのポテンシャルというのはWebの活用で発揮できるのではないか?という思いがあった。動画・SNS全盛のこの時代、ニッチだが根強いファンの多いクラシックギター市場、そしてクラシック文化を広めるという使命。Webの活用ですべてが噛み合うのではないか。集客上の課題を解決するだけでなく、NGFブランドを育てることができるのではないか。とはいえ私自身はWebは専門ではなく、Web関連の分析・提案・実行については札幌在住のWebコンサルタント・エンジニアのY平さんに相談し、大いに手助けしていただいた。

まず集客上の主な課題として単純にSNS上での存在感が無いことが挙げられた。Webサイトは開設してあったものの、記事の更新量が少ない、内容が音楽ファンの興味を惹かない、Webサイトの構造が記事閲覧・拡散を促進していない、などの問題があり、効果を発揮していなかったからである。このあたりの問題は適宜対症療法的に解決することとなった。

そしてWebサイトを充実させていくことはNGFのポテンシャルの発揮にもつながる。NGF公式Webで出演者の紹介記事を読んだり演奏動画を観たりしてフェスティバル当日へ向けて期待感を高めていき、フェスティバルが終わったあとも内容を振り返って楽しむ。フェスティバル会期以外の時期も情報を発信することでその存在をファンの中で育てられることができる。そしてゆくゆくは毎年の公演記録や記事が蓄積されてレガシー化、アーカイブとなり音楽ファンが注目する存在となっていく。ファンがWebサイトを訪れて記事や映像にふれることでNGFの存在を感じる、ある種よりどころのような場所を公演以外で持てることがWebサイトがNGFにもたらした新しい価値である。

 

 リニューアル後のデザイン
 

結果

提案は生田氏の興味を大いに刺激し、双方意見を交え内容を発展させたのちプロジェクトが正式にスタートすることとなる。まずVIの開発に1ヶ月以上かけ、並行してWebサイトやチラシなどを制作、フェスティバル本番3か月前にWebサイト公開やチラシ発送、ポスター掲示などの宣伝活動がいっせいに開始された。Webやチラシ、ポスターなどはNGFテーマカラーであるイエローが印象に残るようにデザインWebサイト公開後は生田氏にがんばっていただきNGF関連の記事を3日に1つのペースでアップしてもらった。SNSでの拡散やページビューなどの反響は最初は穏やかなものだったが少しづつ着実に増えて行った。フェスティバル本番1週間前のタイミングではダメ押しで来場をお願いする記事をアップするなど、課題であった段階的な宣伝施策を実行することができた。(本当は直前用のチラシやDMを作って発送しダメ押しとしたかったが、費用と手間の問題がある。こういう場合Webは非常に便利である。)また同時期にフェスティバル出演者が東京での別のコンサートで素晴らしい演奏をしたらしく、そのことを記事にしたら大きな反響を得て駆け込みの来場者が増えた。このスピード感も紙には無いWebプロモーションの強みである。NGFの新生プロモーションを行った2017年の集客は、前年より公演数が減ったにも関わらず来場者数は変わらず、諸々の施策が功を奏したと言える。先日2018フェスティバルに向けたプロモーションがはじまりWebサイトに2018年最新記事がアップされたが、うれしいことに前年の3倍の反響があったと聞いている。少しづつ注目してくださる人が増え、ブランドが育ってきているのを感じる。

 

名古屋ギターフェスティバル 公式webサイト

 

※追記

NGFサイトにて私の書いた記事を掲載していただきました。

「NGFロゴマークの秘密に迫る!」

STRAMD、無事修了。

春は離れの季節である。

つい先日、1年間通っていたビジネススクールの修了式を迎えた。戦略経営デザイン人材育成講座≪STRAMD≫というビジネススクールの修了式である。

元々主宰の中西元男先生(言うまでもなく…NTTやINAXをはじめとした企業の変革で著名なPAOSグループ代表で、日本型CIの父と称される方である)の著書は何冊も何度も読み返しており、かねてより本講座に興味を持っていたのだが、自分も今後デザインコンサルタントという方向に職域を広げていきたいと思い一念発起、昨年より受講したのであった。

その修了式のなかで講師の方々の名言をまとめたスライドが流れたのだが、その中で「修破離。」というのがあった。考えてみればこの言葉を体得するために1年通っていたようなものである。STRAMDとはどういう学びの場かと言うと、例えば物事を分析・評価して正解を演繹法的に導き出すのがMBA的な思考だとすれば、仮説法的なアプローチをもって新たな価値を創造するのがSTRAMD的であり、その学び・気づき・実践の場がSTRAMDである。MBA的思考というのは100点満点で100点を目指すやり方だと思うのだが、それは修破離の「修」「破」どまりなのではないかと思う(もちろん分析・評価、論理的思考は大事。あくまで主張を分かりやすくするために比較しさせていただいてます)。「離」はそうではない。「離」とは100点満点で言ったら200点や1,000点を取ってしまうことなのではないか。いや、そもそも計測できない世界へ飛び出すことなのかもしれない。しかし世の中を変えるイノベーションや人を動かすビジョンというのはこの「離」の世界から生まれるのではないだろうか。

STRAMDでは年2回のグループ課題&プレゼン大会があり、受講生はそれに挑むわけだが、課題の内容はどこかに答えが転がっているようなヤワなものではなく、「これ何をどうすればいいの…」と途方に暮れてしまうようなもので、とても取り組みがいのあるものである。受講生の方々は皆ビジネスの世界で実績を積んできた人ばかりなので事例研究、調査・分析といったところは着実にこなし、いくつかの“答え”を導き出すのだが、イノベーション、ビジョンというものはそう簡単には出てこない。みなそこで苦闘して自分の思考の殻を破ることで「離」に至るのである。

そうして生まれた提案は得てして独特である。その結果プレゼン大会では4チームがそれぞれ方向性の全く異なる4者4様の提案を繰り広げ、どれもが素晴らしく、面白かった。

自分自身この課題では、新しい価値を模索し、これまで考えてこなかったことを考えた。その経験は自分の枠を押し拡げてくれ、それは自信になっている。

 

STRAMDで学んだことについては考えたいことや整理したいことがたくさんあるので折に触れて本ブログで記していきたいと思う。