VOCA展2018

私はグラフィックデザイナーをやっているのでやはり立体作品や映像作品より平面の美術が好きである。ということで絵画や写真など平面美術の領域で活躍する40歳以下の作家の展覧会であるVOCA展、観に行ってまいりました。一口に平面作品と言っても総勢30人以上の作家による展示なので方向性は色々なので必ず自分が気に入るものが見つかりやすいとも言える。

前川祐一郎「column」ほか

私の展覧会の見方というのは、まず1周ぐるっと全体を見て回ってそこである程度気になったものに目星を付けて、2周目でそれらを中心にじっくり見て回る、というやり方なのだが、この作家の作品は周りの作品と比べるととても控えめで、実は1周目では記憶に残らなかった。しかし2周目でこの作品、なにか輝きというか彩りを覗かせるな、と思いじっくり鑑賞してみようとなった。

この作品はキャンバスに油彩で描かれた抽象画である。ラフなタッチでざざざっ、しゅしゅしゅっ、と筆を走らせている。彩度を抑えたカラーリングは落ち着いており(しかしカラフルにも感じる)、おそらくこれが最初地味さを感じさせたのだろうが、このラフに走らせた色同士の重なりが響き合い淡やかな奥行きを感じさせる。見続けているといろんな発見があり、様々な彩りがぽつぽつと顔を覗かせる。広い世界を感じさせるのではなく何というか…こじんまりとした裏庭を眺めているような自分だけの楽しみみたいな感覚を覚えた。

同時開催の津上みゆき「時をみる」>

VOCA展と同時開催されている津上みゆきの展示も素晴らしかった。

風景を元にした抽象画、というのだろうか。たとえば人工知能にこの絵を見せても何が描かれているかは判別不能だろう。だから抽象画だ、とも言える。しかしそれでもこれは風景画だと私は思う。見ていると街や自然の中に降り立ったような感覚になるからだ。

作品からは一瞬~時期という幅のある時間感覚を覚えた。長さの感覚は様々だが、固定化された瞬間ではなく、とにかく動きや流れというものがあった。そしてそこには記憶・思い出と言った。昔行ったことのある場所へ久しぶりに訪れるとふっとその場所ですごしたときの記憶、思い出、感傷などがよみがえることがある。それと似たような感覚。

風景を見るように意識が入り込んでいけるような絵。

入り込むと昔得た感傷が立ち上ってくる、そんな絵。

上野の森美術館による序文が素敵だった。

「生命感に溢れる豊穣な色の世界とともに、それぞれの絵に流れる時間を感じていただければ幸いです」

まさにこのとおりの作品だった。

自分は趣味で絵を描くのだが(デザインとは全く違う活動として)、前川氏津上氏の作品は自分もこういう絵を描きたいと思わせるものだった。

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